聴かせて、天辺の青
ずかずかと彼へと歩いていく海斗の背中には、確かな苛立ちが現れている。ここからじゃ見えないけど、顔にも現れているに違いない。
だって、彼が立ち止まった。
少し驚いたような顔をして、僅かに肩を強張らせて身構えて。
「それ貸して、俺が運ぶから、アンタは品出しの方をして」
海斗はぶっきらぼうな口調で告げて、彼の抱えていた荷箱をひょいと取り上げる。
そして彼に返事させる間も与えず、荷箱を運んで陳列棚の前に下ろした。あんなに重そうだった荷箱が、海斗が持つと別物のように軽そうに見える。
彼も私と同じことを思っているのか、海斗に見惚れているように固まっている。
「なあ、見てないで早く並べろよ」
きっと睨んで、海斗が口を尖らせた。さすがに、見られていることが恥ずかしかったらしい。
「はいはい、すぐに」
「ごめん……」
慌てて品出しを始める私たちを、今度は海斗が見ている。
うん、確かに。
見られているのは、気分のいいものじゃない。
「ところで、明日の花見はどうやって行くの? 瑞香はおばちゃんの車? アンタは?」
ふいに海斗が投げ掛けた。