聴かせて、天辺の青
だけど、彼の事を聞いてあげられなかったのが心残り。
いや、違う。
『聞いてあげる』なんて言い方は、上から目線でエラそうだ。
『聞きたかった』が本心だ。
彼が酔って覚えてないと言ったのは、きっと嘘。だけど、死のうと思っていたと言ったのは真実。
たぶん、彼も何か打ち明けようとしていたはず。私の話を聞いてくれたのは、自分のことを話し出すきっかけにしようとしたからかもしれない。
だとしたら、私から聞き出そうとしなければ。話し出せるような状況を作らなければ。
自分に似ていると思ったからと彼が言うのなら、私が打ち明けて気持ちが楽になったように、彼も打ち明けることで少しは楽になれるはず。
それよりも何故、先に彼のことを聞けなかったんだろう。自分のことを話すよりも。
悶々と考えていると、ソファの隣に座っている紗弓ちゃんがもたれ掛かってきた。
「ねえ、瑞香ちゃんは英司と連絡取ってないの?」
英司の名前を聴いただけなのに体が強張ってしまうのは、特別な感情があるからじゃない。
さっき、彼に話してきたばかりだから。