聴かせて、天辺の青
「よかった……」
もう一度、彼は噛みしめるように零した。
首元に触れた彼の肌から伝わってくるのは、確かな温もりと彼の鼓動。こうして居られることが愛おしくて堪らなくなる。
「ありがとう」
声に出したら体の芯が熱くなって、視界が滲んだ。これ以上溢れ出さないようにと唇を噛むと、彼が息を漏らしたのが聴こえた。
泣いてる?
堪えようとしているけれど、私に悟られないようにしているけれど、確かにわかった。
彼が泣いている。
気づいてしまったら、胸が大きく震えた。私だけでも泣くものかと懸命に堪えようとするのに、堪えきれなくなる。
ついに溢れ出した涙が頬を伝い落ちていく。彼に触れないようにと顔を傾けたら、ぐいと引き戻されてしまった。
どれぐらい二人で泣いていただろう。
いつの間にか涙が止まって、彼が私の髪をゆったりと撫でつけていることに気づいた。
彼が体を起こして、温もりが離れていく。
できるなら両手を彼の背中に回して、しがみつきたい。
彼を引き止めていたい。
もう少し、このままでいたい。
私の正直な気持ちだった。