聴かせて、天辺の青
ようやく私の言ったことを理解してもらえたらしく、海斗の表情が緩んだ。彼の顔色も明るくて、私の提案に賛成してくれてるよう。
「いいけど、おばちゃんには行くって言ってあるのか?」
「まだ、あとで電話しておくよ」
「おばちゃんは来るなって言うと思うけどなあ? まだ家に居ろ、車も貸さないとか言いそうだけど」
海斗がおばちゃんの口調だけじゃなくて、表情まで真似る。電話越しなら表情は見えないけど、いかにもおばちゃんらしい表情が想像できてしまう。
おばちゃんを説得するのは至難の技かもしれない。
でも、負けるわけにはいかない。
家に居ても退屈で仕方ないし、彼がおばちゃんの手伝いをしてくれているのだと思うと放ってはおけない。
「大丈夫、説得するから」
「いや、やめとけよ。俺もまだ無理して出て来なくてもいいと思うけどなあ……」
と言って、海斗が彼に同意を求める。
たとえ優しさだとしても、『来なくてもいい』と言われるのはやっぱりショックかも。遠回しに自分を否定されてる気分になる。
彼も海斗と同じことを言うのだろうか。ドキドキしながら身構える。