聴かせて、天辺の青

ふっと海斗が笑う。



「ありがとう、ホントに心配無用だから。彼女、河村さんに謝りに来たんだって言ってた」

「謝りに? 宣戦布告じゃなくって?」

「だけど今さら……何を謝りに?」



穏やかな海斗の言葉に反論するように、海棠さんと私はすぐさま返した。ちょっと早口になっていたかもしれない。



「いや、彼女は旦那さんが独身だと思ってたらしい。結婚してることも子供が居ることも、本当に知らなかったんだと謝りに来たんだ」



私たちの反応を怒りだと思った海斗は宥めるような口調。それでも私には彼女が言い訳しているようにしか思えない。



「本当に? 知らなかったなんて考えられないし、何か怪しいと思ってしまうんだけど」

「ああ、疑い出したらキリがないけど信じるしかないんだろうな、彼女は旦那さんときっぱり別れて、会社も辞めて実家に戻るんだと」

「別れたの? だけど会社まで辞めるって……」



独身だと思って付き合っていた人に実は妻子が居たから、自分から身を引くというのは当然の決断だろう。そんな原因で会社まで辞めるなんて、やり過ぎ感というか信憑性がないというか嘘っぽくさえ思える。



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