聴かせて、天辺の青



売り場に行くと、思ったとおり海斗が待ち構えていた。私を見つけて、ずんずんと歩み寄ってくる海斗の顔が怖い。


「瑞香、アイツか? 前に話してた変なヤツって」

「そう、東京から来た人。しばらく、ここに居るつもりだから働きたいんだって」


売り場を見渡しながら、しれっと答えた。やっぱり海斗が食いついてくる。


「おい、アイツが強盗犯かもしれないんだろ? そんなことしたら、お前も匿ったことになるんだぞ?」

「知らなかったのなら仕方ないでしょ? それに彼が犯人か、まだわからないし」


軽く答えて、陳列棚の空いた隙間に商品を並べていく。隣にいる海斗の大きな溜め息が聴こえた。


「おばちゃんか……簡単に人を信用しすぎなんだよ、寝首を掻かれたらどうするんだよ」


海斗が、くしゃりと髪をかき上げる。


海斗の言うとおり、彼を泊める決断をしたのはおばちゃん。おばちゃんの宿だから、私が彼に出ていけとは言えない。


「気をつけろよ、何かあってからじゃ遅いんだからな、少しでも怪しいと思ったら、俺が通報するからな」


陳列棚に向かって隣同士並んだ海斗が、きっと睨んだ。




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