君の瞳に囚われて(加筆・修正しながら更新中)


「──っ…はぁっ……」


口から漏れる吐息が痛みで震える。

痛みと共に、自分の体に流れる血を根こそぎ抜かれていくような感覚に、指先は冷えて動かない。

出血が多いのか、目に映る景色はグルグルと回って吐き気が襲ってくる。


それを何とか堪えて揺れる視線を宝剣に向ければ、祈りの儀式が始まる時に見たそれとは全く違った気を放っていて……


「──…何…で……」


宝石を沢山あしらわれた宝剣は神聖な光を放っていた筈なのに、私の胸に刺さっているそれは深紅に染まり、どす黒い気を周囲に放っていた。


「あら……意識が戻っていらしたの?」


突然、近くで聞こえた声に背筋がぞくりとする。


ゆるゆると視線だけを、その方向に向ければ……

数メートル離れた所から私を見下ろしているオリビア様が立っていた。


「──…オリ…アさ……」


口から出た声は掠れていた。

宝剣の変化に気を取られていて、近付く気配に全く気付かなかったなんて……


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