上司と上手につきあう方法【完結】
もったいぶっているつもりはない。みっともない過去を今さら口にしたくない。
ただそれだけだった。
そんな私のつっけんどんな態度に、紗江子は何かを――おそらく正解に近い何かを察したに違いない。
「了解」とだけ言って、窓際の席に腰を下ろす。
過去をなかったことに出来ないことは百も承知だけれど、イヤな記憶はきれいに消せたらいいのにと、本気で思わずにはいられなかった。
バスの中には半分くらいの社員が戻ってきていた。
座席に座ると同時に、
「平尾さん、佐藤さん、久しぶりだね。元気にしてるかい?」
通路を挟んだ向こう側から、塩田さんがにこやかに話しかけてくる。
「あ、ご挨拶が遅れてすみません!」
慌てたように紗江子と私は腰を浮かせ、彼に会釈をした。