上司と上手につきあう方法【完結】
部長はダブルベリーを辞めるのに。
もう、一緒にはいられないのに。
もうすぐ、さよならなのに――。
「そんなウソ、いいですッ……」
部長の言うことを嘘だと本気で思っているわけじゃない。
ただのワガママだ。
だけど言わずにはいられなかった。
このまま一方的に思いを募らせて悲しみに浸るよりも、少しでも虚勢を張っていたかった。
泣き出しそうになるのを我慢するため、きつく唇をかみしめると、部長は、自分の浴衣のたもとを持ち上げて、私の頬の上をごしごしとこすりながら、
「――それとな、平尾。お前の企画がなかなか通らないのは、失敗を恐れて、どこかできれいにまとめようとしているからだ。もっと冒険してみろ。きっとうまくいく」
と、鬼上司らしからぬ言葉で私を励まし、頭の上を手のひらでポンポンと押さえ、笑ったのだ。