上司と上手につきあう方法【完結】
ああっ、もうっ……!
「ぶちょーの、ばかっ……」
我慢しきれずに、また涙があふれきた。
いや、涙どころじゃない。
でろでろと鼻水まで出てきて、もうひどいことになってた。
「――」
部長はもう、『ごめん』とは言わなかった。
ただ無言で、ほんの少しだけ唇の両端を持ち上げるようにして笑った後、少し眩しそうに目を細め、私を見下ろしていた。
「もうっ、一人で大丈夫ですから、戻ってくださいっ……」
好きになった男にこれ以上醜態をさらしたくない。
鼻をすすりながらうつむく。
「――」
「お願いですから……すぐ、戻りますからっ……」
「わかった」
部長はそう言って、ゆっくりと半歩後ずさった後、踵を返しホテルへと歩き始める。