上司と上手につきあう方法【完結】
確実に距離が離れたのがわかってから、顔を上げる。
闇の中、ホテルへと向かう部長の白い浴衣がぼんやりと浮かび上がっているのが見えた。
たった今、自分の身に起こったことなのになんだか現実味がなくて、夢か幻を見ているような気分だった。
今更だけど、社員旅行に参加したのって、ダブルベリーを辞めるから?
部長は人事部長の塩田さんとかなり仲がいいし。塩田さんは、きっと相談だって受けていただろう。
そして私に参加してほしいって言ったのは――
これを伝えるためだった?
『平尾には言っておきたかったんだ』
部長の言葉が頭の中をぐるぐると駆け巡る。
そのくらいには、信じてもらえていたんだろうか……。
だけどそんなこと知らされても、嬉しくなかったよ。
違う言葉を聞きたかったよ。
「ッ……ヒックッ……」