上司と上手につきあう方法【完結】
派手じゃない。どちらかというと、静かで端整なのに、こんなに悲しい色気のある男がいるだろうか。
仕事が出来て、当然のごとくバリバリと出世して、鬼部長のくせして、
整理整頓、お料理が得意で美人の彼女にフラれて泣いて、
突然会社辞めちゃうとか言ったりして
乗り物に弱くて、キスが上手で――
私の知っている部長はそんな人。
訳が分からない、つかみどころがない人。
そんな彼のことを知りたい、理解したいといくら思っても、彼は近づいた瞬間、またその色を変えてしまう。
とらえどころがなくて、戸惑ってしまう。不安になる……。
彼にその自覚はあるのかな。
「部長……」
呼びかけても、無言で私を見つめる黒い瞳に、ゾクッと背筋が寒くなる。