上司と上手につきあう方法【完結】

言っちゃあなんだけど、天竜飯店は一本道だ。迷うほどの道じゃないし、そもそも私がついて行く理由なんてどこにもないはずだ。


そう言ってやろうと口を開きかけたら、

「セキュリティカード、午後に貰う予定なんですよね」と朝陽が笑う。


だから、一緒にいてほしいなんて――

なんて、華麗に嘘をつく男なんだと呆れながらも


彼の笑顔に言葉を失った。


それは私が昔夢中になった、彼独特の、太陽のような笑顔だった。


子供みたいにくしゃっと笑って、だけど少しも後ろめたさを感じない。
誰だって、仕方ないなぁ、と言いたくなる、許したくなるような朝陽の笑顔――


あまりの懐かしさに時を忘れた。

涙が出そうになった。


サークルで初めて朝陽を見た時のあの甘酸っぱい気持ちが甦る。

テニスコートに落ちる、太陽の木漏れ日の影の揺らぎや、風の匂いが走馬灯のように駆け巡る。


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