恋人たちのパンドラ【完】
壮介の叫び声が聞こえたがそこは無視して走る。

エレベーターを待つ時間も惜しく非常階段へと悠里は走った。

3階分ほど走って、その後は息を落ち着けるように歩いた。

(あんなこと壮介にされたら、私逆らえない・・・)

悠里は潤む瞳からなんとか涙だけは流さずに三国を後にしようとしていた。

1階まで到着し非常階段のドアを開けると、そこには先ほど専務室にお茶を持ってきていた女性が立っていた。

「あなた、ちょっと」

そう言って腕をつかまれて、再び非常階段へと連れ戻される。

「あの、すいません、どちら様ですか?」

腕を引っ張られながら、何とか質問をする。

「受付の秋月です。会社ではね。でもプライベートでは壮介と‘いい関係’とでもいえば理解してもらえるかしら」

そう言って、振り返った美咲は鋭い目で悠里を睨んでいた。
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