恋人たちのパンドラ【完】
「誰だって傷つくのは怖いよ。男の人だからって傷つかないわけじゃないし、傷ついた人じゃないと人の痛みは分からないでしょ?

だから傷つかない人は本当の強さも知らないんだよ」

自分のおなかに回された壮介の手を撫でながら悠里は答えた。

「お前は強いな」

ポツリとつぶやいた壮介に

「毎日泣いてばかりだよ。でもこの子ができて泣くのやめたの。幸せが流れ出るといけないから」

後ろにいる壮介を振り返って答えると、そっと唇が重なった。

―――重なるだけのキス―――

今までしたキスの中で一番胸が高鳴ったような気がした。

そして一番近くにお互いを感じた気がした。
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