彼女のすべてを知らないけれど
「人間は無力だが、強いものだな」
ミコトは何か独り言をささやいていたが、小さい声だったので、俺にはそれが聞こえず、
「何か言った?」
「何でもない。ところで」
ミコトは席を立ち、冷蔵庫の横にかかっている物を指差した。
「あれは何だ」
「ああ、これは、アパートの合鍵だよ。失くした時のために、一応二個作っといたんだ」
引っ越してきてすぐの頃、駅前の合鍵専門店で作ってもらった合鍵。日頃使って いる分を合わせて計3本ある。
「失くした時のためだと?」
ミコトは、理解できないといった面持ちで眉間にシワを寄せた。俺は首をかしげ、
「鍵みたいに小さな物って、うっかりどこかへやっちゃったりするかもしれないから、予備に二個作ったんだよ。変かな?」
「変だな。お前、然と同い年の十八歳だろう?」
「合鍵作る理由に、歳、関係あるの?」
「おおいにあるだろう!」
ミコトは冷蔵庫横の鍵をひったくり、俺の眼前にぶら下げた。
「こういうのは普通、恋人に持たせるために多く作るものだろう! 一人暮らしの男が考えることといえば、それしかあるまいっ」
「なっ、そういうこと!?」
顔を真っ赤にし、俺は言葉を継いだ。
「神の口からそんな発言が出るなんて。
それ、すっごい偏見だよ、ミコト」
「なにぃっ!?」