彼女のすべてを知らないけれど
「一人暮らしの男だけど、俺には彼女なんていたことないし。むしろ、年齢イコール彼女いない歴というか」
世間では、それをモテない男と言うらしい 。俺もそれはよく理解していたが、恋愛歴など周りと比べるものでもないと思っていた。
高校の頃、周りの友達からはこう言われていた。『タメとは思えないくらい落ち着いた思考を持っている』。『枯れている』なんて、辛口な意見を言われることもあった。
「お前は、若い男だよな!? 女を好きになったことがないのか!? 彼女の一人や二人、普通にいそうな顔に見えるが……」
「顔はともかく、俺だって一応男だし、当 たり前にそういう気分になったりするし、 綺麗なコとか可愛いコを見かけたらドキド キだってするよ」
プールや海で水着の女性を見たら、ダメだと思いつつやっぱり目がいってしまうし。
「でも、それと恋愛感情は別というか。まだ、誰かを好きになったことはないかなぁ……。時々話す女子とかはいたし、高校からの女友達もいるけど、お互いに友達~って感じだったし、今は大学も別だから会わな いし。
家ではいつも、クロムと一緒だったし」
「お前、人生の半分損してるぞっ!」
ミコトは熱を込めて異を唱える。
「恋人と食べる食事はうまいぞ! 新しい発見があるぞ! そういう青春を謳歌(お うか)したいとは思わんのか!?」
「んー、特に、彼女ほしいとかは思わないなぁ。やっぱり、そういうのは焦りたくないし、自然に好きになりたいし……」
「くう……! 何て残念な男なんだ! 我が人間で、お前くらいのスペックがあれば、恋愛ライフを楽しんでいるというのにっ!」
「そんなこと言われても……」
見た目のクールさからは想像できないほど 、黒スーツの神は恋愛に憧れる気持ちが強いようだ。初恋すら未経験の俺は、ミコトの熱弁についていけない気分だった。