彼女のすべてを知らないけれど



大学からの帰り道。俺はいつものように然と歩いていた。

バイト探しは今の俺にとって死活問題でもある重要な関心事だが、気にしている問題は他にもある。

「あれ以来、ロシアンブルー見かけないなぁ」

「ああ、あのコか!」

俺の言葉に反応し、然は言った。

「この前、ウチに向かう途中にいたコだよな?」

「うん。あれは、然がお守りくれた日の、帰り道のことだった。

あのロシアンブルーが、他の野良猫達にケンカしかけられててさ。何とか助けることができたけど、弱々しそうな感じだったから、今頃どうしてるのかなって気になって……」

野良猫達の攻撃から助けて以来、あの猫――ロシアンブルーを見かけない。いつもこの辺りをうろついていたのに。居場所を変えたのだろうか?

クロム以外の猫に感情移入しないと決めていたのに、見かけなくなったら見かけなくなったで、気になってしまう。

大学への行き帰り、ロシアンブルーを目で探すのが癖になっていた。
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