彼女のすべてを知らないけれど

「そんなにおいしそうに食べてもらえると 、作りがいがあるなぁ」

俺は、喜びで頬を緩める。バイトが受かっただけでも嬉しいのに、初めてチャレンジした料理も大成功した。

「今日はいい一日だなぁ」


食事もそこそこにまったりお茶を飲む。ミコトは食べる手をいったん止め、尋ねてきた。

「いつも金がないと言い、こんなに食材を買ってくることのないお前が、なぜ、今夜はこんなに奮発したのだ?」

「バイトに受かったんだ。これから、毎週土曜日はバイトするよ。

一日四時間だけだけど、今のスケジュールじゃそれが限界だし、しないよりマシだから」

「バイトだと? 面白いヤツだ。命守流願望成就札を使えば、働かずして楽ができるというのに。

ところで、どんなバイトなんだ?」

俺の言動を新鮮に感じるらしく、ミコトは興味津々である。

「会社に指定された地域にチラシを投函する仕事だよ。ポスティングっていうんだ。一軒家を中心に、各家庭に広告を配るんだって。企業の宣伝のお手伝い、みたいな感じかな。

健スポ以外で身体動かすことないから、ちょうどいいかも」

大学では『健康とスポーツ』(通称・健スポ)という講義中にしか身体を動かさない。

「それはまた、人間にとってはしんどそうな仕事だな。他にも楽で時給の良いバイトがありそうなものだが」

「体育会系サークルに入ってたらまた違う仕事を選んだかもしれないけど、俺にとってはちょうどいいんだよ。採用されてよかったと思ってる」
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