彼女のすべてを知らないけれど
お金目当てに始めたバイトだったけど、 楽しいなぁ。
チラシを入れたキャリーバッグを引きながら、俺はルンルンと住宅街を歩いていた。自宅アパート周辺と違い、この辺りは捨て猫がいない。
それなのに、目の前を横切る青灰色の小動物は、よく知る、あの猫だった。
「ロシアンブルー……!」
間違いない。あの日助けた猫だった。なぜ、こんなところに!?
追いかけたい気持ちになったが、今はまだバイト中。これからまだ、何百枚というチラシを配らなければならない。
似てるだけで、“あの”ロシアンブルーじゃないかもしれないし……。
そう思うことで、無理矢理ポスティン グに集中した。