彼女のすべてを知らないけれど
バイトを終えると、夕方になっていた。
会社にキャリーバッグなどの仕事アイテムを返却しに行った後、俺はすぐさま、さきほどポスティングしていた地域に走った。ロシアンブルーのいた路面 へ……。
しかし、やはりというべきか、そこには猫の姿はなかった。あれからだいぶ時間が経っているし、違う場所に移動したのかもしれない。
目を皿のようにして、歩道をあるく。
夕暮れの寂れた公園にたどりついた。遊具も少ないし、誰もいない。
「……!」
見つけた。ベンチの下でうずくまっているロシアンブルーを。
ひとくちに猫と言っても、様々な容姿の猫がいる。同じ種類の猫でも、それぞれの顔は違う。目の大きさや口も、見比べてみると分かるが、個性があるものだ。
高校時代、自称猫マスターを名乗っていた俺は、猫を見分けるのに自信があった。ベンチの下でうずくまるあの猫は、あの日野良猫達に絡まれていたロシアンブルーに違いない。