彼女のすべてを知らないけれど

「今日はずいぶん帰りが遅かったではないか」

アパートに戻ると、ミコトの声に出迎えられた。

「バイトがちょっと長引いたんだよ」

俺はそう返し、冷蔵庫の中から食材を取り出すと、パスタを作り始めた。最近、ミコ トの分も合わせて二人分作るのが習慣になっている。

ミコトは、なにかと食品を調達してきてくれる。全国各地の部下から、差し入れをもらっているらしい。それら全て、どこかの誰かが神社の神主に送った食材や乾物だったりするのだが、俺も、間接的にそれらを食べている。なので、ミコトの分の料理を作るくらいは当然だと思っていた。

「バイトが長引いた、だと?」

ミコトはいぶかしんでいる。

「これまで、そんなことは一度もなかったではないか。残 業のある職種でもあるまいし」

「そういうこともあるんだよ。

ミコト、手があいてるなら、トマト切るのお願いしていい?」

俺は、そう答えるだけだった。ロシアンブルーに関する出来事を、なぜだか報告したくなくて。
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