彼女のすべてを知らないけれど
なぜ、ロシアンブルーのことをミコトに言えないのだろう。自分でもよく分か らなかった。
あの猫の生(お)い先が短いという獣医の診断を聞かなかったことにしたいから ?
猫に対し、情を抱けない自分を隠したいから?
無断で猫にお守りをあげたことを、責められるかもしれないと思ったから?
あのまま放置しておくのは心配なので、俺は、翌日もロシアンブルーの様子を見に行くことにした。
命守神社。やはり、休日だけあって、平日の倍、参拝客で賑わっている。
今日は日曜日で大学も休みなので、然もいるはず。
まず、然に一言挨拶してから猫の様子を見に行くつもりだったのに、彼はいなかった。彼の家のインターホンを何度か押してみたが、反応がない。
「然の親は多分、仕事中だよな。神社、忙しそうだし……。
仕方ない、然には後で報告しとこう」
引き返そうとすると、この間、お茶を出してくれた然の祖父に呼び止められた。 俺のことを覚えていてくれたらしい。
「然なら、今しがた慌てた様子で出ていったよ。なんやら、猫がいなくなったとかで」