彼女のすべてを知らないけれど
「あの猫、いなくなったんですか……?」
背筋がスッと冷たくなる。
あのケガで、そんな遠くに行けるとは思えない。誰かに連れていかれたのかもしれない。それがいい人だったらいいが、動物を虐待するような悪人だったら……!!
昨日、ケガしたロシアンブルーを見つけてしまっただけに、俺の思考はマイナスにばかり傾いてしまう。
「湊君、だったかな。あれは、君が見つけて保護した猫なんだってね? ひどく弱っているようだったが……。
絶対見つけると言い、然は出ていったよ」
「そうですか。ありがとうございます。俺も探してみます!」
俺は、敷地内の隅まで走った。昨日、段ボールを置いた場所。何か、手がかりが残っているかもしれない。
けれど、期待は裏切られた。段ボールの中には、何もなかった。猫の姿はもちろんだが、俺が置いたはずのお守りでさえも。
お守りは、段ボール箱に入れただけだ。猫の首にくくりつけたわけでもない。
猫が、お守りを持って移動するとは考えにくい。ということは、誰かが、猫と一緒にお守りを持ち去ったのだ。