彼女のすべてを知らないけれど

ミコトは、然と会ったことがあると言っていた。ということは、二人は顔見知りということになる。

しかし、いざ俺のアパートでミコトに会ったら、然はきっとビックリするだろう。

ひそかにそれを楽しみにし、俺はアパー トの扉を開けたのだが、どういうわけか、 食欲旺盛な神の姿はなかった。

「ごめん、いると思ったんだけど……」

隣の部屋も調べてみたが、やっぱり 、ミコトの姿はなかった。

ダイニングテーブルの上にいつもあるミコトの調達食材も、今日はない。

どこかもの寂しいと思いつつ、俺は普段の調子で然に接した。然も、俺が言った「紹介したい人」について、深く尋ねてこなかった。


その夜、俺の手料理は然に大絶賛された。

ミコトがいない。その代わりとでもいうように、今夜は然がいる。そのことを不思議に思いながらも、俺は自然に振る舞った。
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