彼女のすべてを知らないけれど




「今日は、ありがとな。また、食べに来てもいい? 食材なら、持ってくるし」

「うん、いつでもきて。こっちこそ今日はありがとう」

アパートの前で然を見送り、俺は急いで部屋に戻った。もしかしたら、ミコトがいるかもしれないと考えて。

「いない、か……」

ミコトもいない。然が帰った後の部屋は、やけにガランとして見えた。

「ミコト、どうしたんだろ。いつも、呼ばなくても来てたのに……。

もしかして、お守りが無くなってしまったことと関係が……!?

いや、でも、昨日は普通にいたし、それはないか……」

昨日といえば、ロシアンブルーにお守りをあげた日である。それなのに、昨夜ミコトは俺の前に現れた。

ミコトの出現と、俺がお守りを持っているかどうかは、無関係なのかな。

「じゃあ、どうしてミコトは姿を見せないんだ……」

然がいたことで紛れていた暗い気分が、戻ってきそうになる。神社から姿を消した猫の行方さえ、まだつかめずにいる。

「マイナス思考じゃ、マズイマズイ!!

また明日、探しに行くんだから、ウジウジしてたって仕方ないだろっ!」

わざと陽気に独り言をしつつ、俺は夕食 の洗い物を片付けたのだった。
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