偽りの婚約者
廊下を歩いていると、誰かがその場で蹲っていた。
蹲っていたのは、安西千夏だった。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
「立てるか?」
「は……はい……。っ……!」
立ち上がろうとしたようだが、またその場に蹲ってしまった。
「無理だな……」
体を支えてやると、安西千夏は何とか立ちあがった。
「すみません……。」
「さっきパーティーは終わって、みんな帰り始めているけど」
「そうなんですか……後は一人で大丈夫ですから、ありがとうございました」
俺の手を放して歩こうとするが、またグラッと安西千夏の体が倒れかかって来た。
先輩の話しじゃ、かなり弱いって感じだったけど……動けなくなるなら飲むなよ。
なんだか、危なっかしいやつだな。
タクシーに乗せたはいいが、住所を聞き出せる状態ではない。
仕方なく、自分のマンションに連れ帰った。