偽りの婚約者
「なんだ?」
「あの……私はあなたと……その……」
訊きづらそうな態度で、彼女が何を知りたいのか直ぐに分かった。
「……関係があったかって事か?」
「ま!もちろん、あるわけないですよね!?」
その通り。もちろん、何もあるわけはない。
俺は隣の部屋で寝ていたし、好きでもない女を抱くほど飢えてもいない。
でも俺は、なぜか彼女を苛めたくなった。
「……どうかな?」
「は、はぐらかさないで下さいっ!」
「そんなに知りたいなら、教えてやるよ」
俺はわざと不安にさせるように笑みを浮かべる。
そうしたら、安西千夏は目に見えてわかるように「どうなんですか?」と、聞いてきた。
急に意地悪する気も失せ、どうでもよくなってしまった。
「別に何もしてねぇよっ。起きたんなら早く支度しろ、送って行くから」
「けっ、結構です!
自分で帰りますから」
安西千夏はそう言うと、急いで部屋から出ていってしまった。