偽りの婚約者
軽く触れ合わせた唇が離れた。
「千夏?」
もう少し一緒にいたい……。
思わず彼の腕を掴んでしまった。
引き寄せられもう一度唇が合わさり今度はお互いを求めるようなキスを交わした。
「そんな顔するな。一緒に連れて行きたくなる」
このまま、連れていってほしい。
もっと一緒にいたいと思ったのに。
「風が冷たくなってきたし、もういいから家の中に入れ」
「でも……東條さんをここで見送りたいんです」
「……しょうがねぇな。車が出たら直ぐに家の中に入れよ。また連絡する」
「待ってます」
東條さんは車に乗るとエンジンをかけた。
片手をあげた東條さんに私も手を振り返すと車は発進した。
車が出たら直ぐに家の中に入れって言われたけど見送っていたくて角を曲がるまで見送った。