偽りの婚約者


千夏の両親に今までの事を話し彼女との交際を許してもらえた。


見送るという千夏と一緒に止めておいた車の所まで歩いた。
軽く口づけした後、寂しそうに見上げる千夏に引き寄せられるようにもう一度彼女の唇に触れ今度はさっきよりも深く求めるようにキスをした。



このまま、連れ去りたいという想いにかられたが。
想いとは反対の言葉を口にした。



「風が冷たくなってきたし、もういいから家の中に入れ」




「でも……東條さんをここで見送りたいんです」



「……しょうがねぇな。車が出たら直ぐに家の中に入れよ。また連絡する」



「待ってます」

離れがたい気持ちを振り切り乗り込んで車を発進させ、角を曲がる前にミラーで確認すると千夏はまださっきの所に立っていた。


何やってんだよ直ぐに入れって言ったのに。
あんな所に突っ立っていたら体が冷えちまう。



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