偽りの婚約者


ちょうど来たバスに乗り東條さんのマンションに向かう。
今までは迎えに来て貰うかタクシーで行っていたけど最近バスがマンションの近くを通っている事が分かった。



紗季さんの腕時計は本当にあるかもしれない。
信じたいと思ってはいる。
けれど……もしかしてと疑ってもしまう。



マンションに向かうバスの中、不安な想いに押し潰されそうになった。



玄関で出迎えてくれた東條さんの横をすり抜けて部屋の中を探し歩く。



「遅かったな。……おい千夏?」



私の後を付いて来て何事かと聞いてくる彼には取り合わずに、ひたすら探した。


「どうしたんだ?」



「ない……、ここにもない……ここも違う……」



かれは何も言葉を返さない私に苦笑し私のやってい
る事を黙って見ていた。



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