偽りの婚約者
「……お前のお兄さんが、許さないだろう。きっとまた、邪魔される」
「……そうね。兄はしつこいから……兄があなたにしたことは最低よ。ずっと、ずっと謝りたかったの……、ごめんなさい」
「……俺の事なんて忘れろ。お前は今の婚約者を大切にしろよ。玲奈のお兄さんの秘書をしているなら、きっと余程できた人なんだろうな」
「そうね、あの兄の為に良くやってくれてると思うわ」
秘書の話しになった途端に、玲奈の表情が変わった。
そうかお前は……。
「俺に悪いと思ってるなら……今度こそ幸せになれ」
「雅人……」
「……会えて良かった。もう行くな。」
「……うん」
別れを済ませ、玲奈をその場に残し喫茶店を出た。