偽りの婚約者
自分では、気が付いてないんだな……
秘書の話しになった途端に、あんな顔しやがって……。
まぁいいさ、これで心置きなく前に進んで行けるよ。
マンションの駐車場に車を停めて降りると。
スッと人影が目の前に現れた。
「……待ってましたよ。久しぶりの妹との再会はどうでしたか?」
滝本慎一。
またか……もうあんたの顔なんて見たくねぇんだよ。
「さっき、あんたの妹とは別れて来たんだ。
もう玲奈とは関係ない。
良かったなぁ、あんたの思い通りになって?
分かっただろう?……もう帰れよ」
「妹とは別れたって言う事ですか?……そんなのは信じられない。……なるほど、こっちの不意を付くつもりなんですね?」
相変わらず自分本意で人の話しを聞かない男だな。
「……いい加減、しつこいんだよ!!
別れたって言っただろうが!」