真夜中に口笛が聞こえる
体の水滴を拭い、下着を替え、新しいシャツを着て、再びスラックスに足を通す。
越石のいう「直ぐに」とは、一晩考える余地すらないという事だろう。研究にしか興味のなさそうな彼が、信一郎の身を危ないと言うのだ。
まだ濡れた髪の毛を残し、脱衣所の戸を開ける。
すると、いきなりだった。
水鉄砲のようなもので、顔に向かって液体を吹き掛けられた。目を覆い、風呂場へ押し込まれた信一郎は、浴槽に足を取られ、中で尻餅を付いた。
浴槽に嵌り込んだ信一郎は動けない。それでも執拗に液体を吹き掛け続ける。
目は覆っていたのだが、鼻や口には、容赦なく入り込む。
ようやく液体がなくなったのか、吹き付けが止む。
目を覆っていた手を下げると、そこにいたのは、鬼の形相をした金山静江だった。
「かっ、金山さん! これは、いったい」
静江は何回かボタンを押して、ライターの火をつける。
「金山さん、止めて下さい!」
液体がガソリンであることは、臭いから瞬時に分かった。
「娘を……、ゆかりを死に追いやったものを、生かしておく訳にはいかないの」
目を真っ赤に腫らした静江は、苦しそうだった。うまく息が吸えない様で、ライターを持つ手が震えている。
「白河じゃない! 僕は白河秀夫などではない!」
「そんなこと、わかってる! わかってるわよ! でもね、それでも白河の体に触れた貴方は、変わって行くの」
左手に持ったライターの炎を近付ける。右手には包丁が握られている。
越石のいう「直ぐに」とは、一晩考える余地すらないという事だろう。研究にしか興味のなさそうな彼が、信一郎の身を危ないと言うのだ。
まだ濡れた髪の毛を残し、脱衣所の戸を開ける。
すると、いきなりだった。
水鉄砲のようなもので、顔に向かって液体を吹き掛けられた。目を覆い、風呂場へ押し込まれた信一郎は、浴槽に足を取られ、中で尻餅を付いた。
浴槽に嵌り込んだ信一郎は動けない。それでも執拗に液体を吹き掛け続ける。
目は覆っていたのだが、鼻や口には、容赦なく入り込む。
ようやく液体がなくなったのか、吹き付けが止む。
目を覆っていた手を下げると、そこにいたのは、鬼の形相をした金山静江だった。
「かっ、金山さん! これは、いったい」
静江は何回かボタンを押して、ライターの火をつける。
「金山さん、止めて下さい!」
液体がガソリンであることは、臭いから瞬時に分かった。
「娘を……、ゆかりを死に追いやったものを、生かしておく訳にはいかないの」
目を真っ赤に腫らした静江は、苦しそうだった。うまく息が吸えない様で、ライターを持つ手が震えている。
「白河じゃない! 僕は白河秀夫などではない!」
「そんなこと、わかってる! わかってるわよ! でもね、それでも白河の体に触れた貴方は、変わって行くの」
左手に持ったライターの炎を近付ける。右手には包丁が握られている。