最後の血肉晩餐
 私は怒りよりも患者を診なくては、いけない立場なのに、しかも好きな人に怪我をさせられるなんて、心底情けなく思えた。


やっとのことで足を引きずり、玄関の扉を開けることが出来た。


入り込むと、寝室の扉があけっぱなしになっており、布団の上に座ってこちらを眺めているのがわかった。


その目線を無視し、鍵をかけ、仕事用のビトンのバックをガラスのテーブルに置き、今度はティッシュで肘の血を拭った。


「こっちに来て」


亮が私を呼んだ。私は話し合うため、仕方なく寝室に歩いた。


「何? なんでこんなことをするの?」


布団の上にしゃがんだ。亮はすかさず私の背後に回り、片手で頭を布団に押し付け、腰を無理やり持ち上げ、四つん這いにさせた。


「なにをするの!? 背中や腰が痛いんだからやめて!」


全身にまた痛みの電流が走った。
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