最後の血肉晩餐
「やっぱり、美味しかったし、ステーキがいいかな」


「わかったわ。足りなくなったら、どこからでもまた手に入れてくるから沢山食べて!」


身を翻し、嬉しそうに恵美はキッチンへと戻って行った。

どこからでもだと?? これ以上、罪を増やしたくない。それが全部俺のせいになってしまうかも知れないなんて、考えるだけでも恐ろしい。


頭の中でシュミレーションをする。普通に家庭で使用するあのナイフで、どこまで深く刺せるんだろうか? あんなもんじゃ止めを刺せないだろう――。


では酔っ払わせて、隙を見てナイフかフォークを盗み、致命的なところを狙う。これはどうだ?


致命的な部分? どこだ? 頭を回転させろ! 俺の目線の高さを合わせ、きっと食事をする。目線が同じ……瞬時に、目玉を狙うか? 狙った後どうする? 反撃できるか?


その後の鎖はどうする? 鍵もなく外せるだろうか? ナイフで少しづつでも削るか? 削ったとしても、もしも……外れなかったら?


安易に殺したとしても、防音のこの部屋では、助けさえ呼べない。どうしたらいいんだ?


シュミレーションが頭をグルグルと回転する。どうしても良い結果に結びつかない。


武器は手に入れることが出来たのなら、隠し持つ。鎖はおとなしくし、順応さを見せ、外してもらう……苦虫を潰した。


――くっ。これしかないのか!?


扉のドアノブがくるりと回転し、ゆっくりと開いた。
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