最後の血肉晩餐
「不思議なものよね、人肉なんてって思ったけど、食べてみたらすごーく美味しいでしょう?

みんな病み付きになるのがわかるわよね? だから、共食いは昔からタブーにされてきたのかしら。美味しすぎて、人間世界が滅びないように」


恵美がそんなことを言いながら、ナイフとフォークを器用に使い、切られた分厚い肉汁溢れる赤い肉をこちらに向けた。


その塊を見ていると、今まで殺されてきた恨めしい表情をした人物たちが、宿っているかのようだった。


「ごめん、まずワインを飲ませてくれないか?」

「あ、気が利かなくてごめんね! ちょっと待ってね」


恵美は楽しそうにワインをグラスに注ぎ、俺はそれをぼんやりと眺めていた。


綺麗なガーネットのような真っ赤な飲み物と、恵美の溢れる血の妄想が重なり広がった。ナイフとフォークはお皿の上に置かれてある。


無理だ……届きっこない。


ん? なんだか変だぞ。生ゴミのような異臭が仄かに香ってる気がする。ブルーチーズのような匂いではない。


ステーキの香ばしい、良い香りのはずなのに、まがい物が混ざってるかのような臭いがする。なんだこれは?


「はい飲んで」

「ちょっと待って、なんだか変な臭いがしないか?」
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