腕枕で眠らせて
「うちの店、毎月24、25が棚卸しなんですよ」
チリリンとドアベルを鳴らして扉を閉めると同時に紗和己さんが言った。
「12月はちょうど忙しくてゴチャゴチャしてる時期と被るからいつもより時間掛かっちゃって。去年は在庫が大きく合わなくてエラい手間取って、結局終わったのが夜の11時過ぎですよ」
へちゃっと力の無い笑顔だと自覚していたけど、今の私にはそれを向けるのが精一杯で。崩れそうな笑顔で必死に頷いた。
「でも、今年は急ぎますから」
きゅっと、両手で頬を包まれた。ふいに。
へちゃっとした笑顔ごと。
「…紗和己さん…」
「寂しくさせませんよ」
頬をふにふにと大きな手が包む。
ふにふにされてると、へちゃっとした笑顔は段々自分の笑顔に戻っていった。
「クリスマスを堪能出来ないのは雑貨屋の宿命ですけど、でもやっぱり一緒に居たいじゃないですか。ふたり初めての聖夜なんですから」
「…ふふ、紗和己さんて本当にロマンチスト」
「言わないで下さい、それを」
照れたように紗和己さんが笑って、ふにふにはちょっと強いぷにぷにになって、私の笑顔も本当の笑顔に戻って。
「ケーキ用意して待ってます。何時になっても」
「じゃあ僕はシャンパンを持っていきます」
真冬の空の下で交わした約束は
温かくて、温かくて、切ないくらい温かくて。
すぐに濁ってしまう私の弱い心を貴方はいつも澄みきらせてくれて。
優しい眼差しといつか言った『信じて下さい』の言葉が、私の膝を崩れ落ちないようにいつも支えてる。
「クリスマス、楽しみです」
紗和己さん。苦しいほどに、貴方が好き。