腕枕で眠らせて
「お待たせしました、美織さん」
と、紗和己さんが私を迎えに来たのは夜の10時過ぎ。
デートには遅すぎる時間帯だけど、きっと紗和己さんは最速で棚卸しを終わらせてきてくれたはず。
そして、そんな事は百も承知で私は待っていた。
「さあ、行きましょう」
そうしてふたりで出発した先は、ディナーには遅すぎるレストランでも、紗和己さんのマンションでもない。
マンションでのお泊まりは少し考えたけど、翌朝も早い紗和己さんの予定を考えると却って慌ただしくなってしまいそうで止めた。
そのかわり、残り僅かな聖夜の空の下、紗和己さんが連れて来てくれたのは。
「これ、ブランケット使って下さい。寒くないようにして」
そう気遣いながら私を車から降ろして連れ出した先は、住宅街ではあるけれど夜景が一望出来る高台の公園だった。
幸い晴天の夜空には東京なりにも星が瞬いて見えて。
公園の柵の下には篝火のような家々の灯りと、クリスマスらしくキラキラ輝くイルミネーションが幾つも見えた。
「…わあ、キレイ…」
柵に手を掛け思わずうっとりとそれに見入った。
「レストランでもホテルでもなくて申し訳ないけれど、美織さんこういう景色好きかなって思って」
空にも足元にもキラキラを敷き詰めた風景に夢心地で酔いしれる私の隣に並んで、紗和己さんは白い息を吐き出しながら言った。
誰もいない夜の公園。
静かでふたりの吐息の音しか聞こえない。
ただ瞬く光の粒に囲まれて、隣の彼の熱だけ感じられて。
今、ここには、幸せしか無い。