腕枕で眠らせて
「美織さん…」
ただ俯く私の顔を、紗和己さんは包むように撫でてゆっくりと自分の方へ振り向かせた。
とても真っ直ぐな瞳とぶつかるほど近くなって。
心配そうに見つめる彼の顔が、私のすぐ側にある。
優しい右手は慈しむようにふわふわと頬を撫でてくれて
大きな左手はそうっと力強く腰を抱いて。
空気さえ邪魔なほど近いから。
私は黙って目を閉じたけど。
触れ合ったのは唇じゃなくて、コツンと音をたてた額と額だった。
そっと開いた瞳に映ったのは、穏やかに、でも困ったように笑う紗和己さんで。
不安でいっぱいの私に彼がくれたのは
悲しい味のキスじゃなくって
ただひたすらに穏やかに待ってくれる温もりだった。
「……紗和己さん、あのね」
「うん」
「私ね、紗和己さんが好きみたい」
「うん」
「好きだから…怖いみたい」
「うん」
「すごく、怖いみたい」
「うん」
吐き出した感情の欠片はきっととても濁っていたのに。
紗和己さんはただ頷きながら、全部を抱きしめ続けてくれた。