廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜


前略 お陽さま


早いもので出征の日から半年以上が過ぎました。

私は一時、病に伏せっておりましたので、部隊から離れております。


今は昭和十三年に南京に続いてわが日本軍が攻略した漢口という地におります。


こちらは、あなたのおられる廣島よりもやや都会です。

日本軍の駐屯地もあちこちにあり、飛行場もあります。工場、商店が並んで大方のものが揃います。


ですが時折、米軍の空襲に襲われます。廣島はどうでしょうか?


あなたは無事に過ごしておられますか?


私の方は、病も癒えましたので、勤労動員で工場勤務をしています。

兵隊として召集されたにもかかわらず任務を全うできずにいることが悔やまれてなりません。


お陽さん、あなたは言いましたね。神様は人に苦難と幸福を平等に与えてくれるのだと。


だとすれば、きっとあなたの身には幸福が寄り添うはずです。


私には、きっと……


私は同行できなかった仲間の分までしっかりと働き、いつかきっとあなたを迎えに行きます。


笑わないで下さい。


遠く離れた街から、そんな夢を見ていても良いではないですか。


遥か遠くの地より

遠藤悟
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