廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜

『ワシの息子はなあ、海軍の飛行兵じゃ。貴様のように軟弱な若い者を見ると腹がたつ』



検閲官は、裂いた手紙を悟に投げつけた。





理不尽が当たり前の世の中である。



ひとつ狂うと皆右へならえで狂うのだ。





悟の後には検閲を待つ人々が列を作っていた。その人々の前で侮辱され、さらには陰口を叩かれる。


『静岡連隊ですって……』


『病でねぇ……本当かしら、大きな身体して……』




悟は、手紙をかき集めると、逃げるようにして下宿に戻った。


そして、灰皿に入れて手紙を燃やす。




『つまらない世の中だなあ。お陽さん。

オレもつまらない人間なのか?』






手紙は一瞬にして燃え尽きる。



戦争とは、個の自由がこうも否定されるものか?




窓の外には、ドーム型の屋根をした建物が遠くに見える。


廣島の遊廓からも、同じような建物が見えた。



『きっと、迎えに行きます』





悟は、咳き込みながらも窓の外を眺め、煙草をふかしていた。



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