廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『そうです。自ら志願して敵艦に飛行機もろとも突っ込む。……そういう作戦を海軍が始めたらしく、かつての肉弾三勇士と同じように飛行兵は【軍神】扱いです』
悟は言葉を失った。
同時に徴兵忌避を犯した自分を恥じる気持ちもあった。
まともに顔が上げられずにいた。
『私はね、遠藤さん……ここだけの話、この戦争は、いかんと思うんです』
『いかん……とはつまり』
『はい。負け戦です』
悟はゴクリと息を飲んだ。身の回りにこれ程ハッキリと【負け】を口にする者はいなかった。
『若い命が自ら敵艦に突っ込む作戦が、国によって持て囃されるということは……それなりに危機迫っている状態ですよ。
あなたも前線におられたならわかるでしょう?』
『負けたら、どうなりますか?』
『ここ、つまり大陸の漢口や南京、満州は日本が侵略して奪ったのですから、もちろん敵が奪い返すでしょう。
我々が行ったのと同じように、もしくはもっと卑劣に……』
『内地は……』