廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『兵隊さん、初めてみる顔だねぇ』
遊廓の店先に出て来たのは、廓の女主のようだった。
店の奥を覗くと、何人かの女郎が花札をしていた。
播磨は、その淫らな姿を見て眉間にシワを寄せる。
『どの娘がいい?今夜はなぜだか客の入りが少なくてねぇ。あんたツイとるよ』
女主はキセルをふかしながら言った。
『女を買う気はない』
『じゃあ、何の用?』
急に声色を変えた女主は煙を播磨に吹きかける。
『ゴホッ……お…お陽さんという人に手紙を……ゲホッ……人から預かって来たんだ』
女主は、播磨の差し出した手紙をひょいと奪い、懐に入れた。
『これは、おようを買ったら渡してやるよ』
『そんな……』
『こっちも商売じゃけぇねぇ。それでなくても最近は男が減ってから儲けが少のうて……』
播磨は、遠藤の悲痛な顔を思い浮かべると、お陽を買うような非情な真似はできないと思った。
だが、どのような女か見て見たい気もする。
『お陽さんというのは……どの方ですか?』
『今、他の客の相手をしとる。今は一番のうちの稼ぎ頭じゃけぇ。なんなら他の女でもええよ。おようは高いけぇ』