廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『失礼します』
播磨は咳払いとともに襖を開けた。
お陽は背中をあらわにして布団の上に座っていた。
『申し訳ありません。おたみさんが急かすもんじゃけぇ……』
慌てた播磨は、部屋を出て行こうとする。
『あら、いいじゃない。いらっしゃいよ、お兄さん』
お陽は襦袢を軽く羽織り播磨を誘う。
『いえ、私はそんなつもりでは……』
目を反らす播磨をお陽は笑う。
『そんなつもりじゃないってあんた、あたいを買ったんじゃろう?』
播磨は慌てて荷物の中から悟の手紙を出した。
『私はこれをあなたに渡しに来たのです。しかし、ここの主人らしき方に取り上げられて、あなたを買わないと渡すわけにいかないと言われまして……』
お陽はじっと播磨を見つめていた。
『変わったひと』
そう言ってニヤリと口角をあげる。
『え?』
『何ですか?それ』
『遠藤悟という男をご存知でしょう?』
『……遠藤……悟?』