廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『これは彼からの手紙です。あなた宛に……。あなたと遠藤さんの関係は詳しく知りません。しかし……』
お陽は目の前に置かれた手紙を手に取ろうとしない。
『女郎が……馴染みでもない男のことなんか、覚えていませんよ。
それより、さあ……』
お陽は自分の元へと播磨を誘う。
『さっさと終わらせてしまおうじゃないか、お兄さん。
あたいは今夜は疲れとってねぇ。
さっきの将校ったら、明日から船に乗り南方だって言って何度もしつこいのなんのって。
それとも、あんた女郎屋に来て本当におなごを抱かずに帰るつもりかい?』
播磨は、お陽に背を向けた。
『私は死ぬまで一人の女しか抱かないつもりですから』
クッ、クッ……ウフフフ
播磨は振り返り、笑うお陽を見据えた。
死んだような笑顔をする女だ。
目は手紙の一点を見つめ……全く笑っていない
『羨ましい女じゃね。奥方かい?』
『いえ。婚約をしていましたが……死にました』