廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『……そうかね』
お陽はそれ以上、播磨の忘れ得ぬ女について訊こうとしなかった。
ただ黙って、乱れた着物を直した。
『手紙のこと……』
ポツリと言ったお陽。
播磨は擦りきれた畳の上に置かれた手紙を、お陽の手に持たせた。
『確かに渡しましたから。では、私はこれで……』
播磨が立ち上がると、
『あのっ』
お陽は鬼気迫るような、哀しく訴えるような瞳で播磨を見ていた。
『あの方に……悟さんに何か……あったのでしょうか?どうか教えて下さい。
あたいはあまり字を読むのが得意でないのです』
播磨は、お陽を憐れだと思った。
きっと遠藤に惚れてはならぬと葛藤していたのだろう。
そして、お陽を安心させるように、彼女に向き合った。
『遠藤さんは無事ですよ。彼はあなたしか、心の拠り所がないと言っていました』
播磨の言葉に、ほっと胸を撫で下ろした
お陽だった。