廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
手紙を読み終わった播磨が見たものは
お陽の頬に伝う、美しい涙だった。
行灯の明かりが、酷くせつない。
播磨の心にじわりじわりと黒い影を呼び寄せる。
決意が揺らぐ。
『想い人が生きているということは、素晴らしいことですね』
播磨はカサリと手紙を畳んだ。
『女郎がたった一夜の相手に惚れるなんて……ご法度です。笑って下さい。バカな女です。
あの方も、こんなあたいのために……』
『戦とはきっと……心の支えがなければ、生きる糧がなければ
耐えられないほどつらい環境なのです。
あなたは遠藤さんの生きる糧だ。
遠い大陸から、これほどまでに思われるほどに価値のある女なのですよ』
お陽は、悟からの手紙を抱きしめて泣いていた。
その様子を見て、播磨は酷く嫉妬の念を膨らませる。
自分でも制御できない、奥底から湧き出した心。
気持ちを通い合わせることのできる相手がいない淋しさを、彼はずっと封印してきた。