廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『この戦は負けますよ』
播磨は、恐ろしいほど冷たく言い放った。
『一億玉砕になりかねない。
だから僕は、さっさと潔く死んで大切な者のもとに急ぎます。
米英に支配され、女は強姦され、年寄りや子供でさえも奴隷扱い。
そんな世の中は見たくない。御免だ』
『……そんなもの。怖くもなんともありゃせんよ。
戦争に勝っても負けても女郎のすることは大して変わりゃせんけえね。
生きていればこそじゃ。
いつか、きっと。
幸せが……あんたも望みを捨てちゃいけんよ。
望みを捨てちゃ、おしまいじゃ。
どうか、戦地に行かれても最後まで生きるという望みを捨てないで』
播磨は、お陽の言葉にカッとなった。
決心が揺らぐ。
死ぬ決心が……。
『女郎の癖に説教をするな!!』
播磨はお陽を押し倒した。
『オレは、こんなつもりで生きてきたんじゃない!!
南方で……誰も知らないジャングルで屍になるために
母さんはオレを生んだんじゃない。
オレは単なる駒じゃない!!
ちゃんと意志を持って、自分の進むべき道を忠実に歩いてきた【人間】だ!!
人を愛して大切にできる可能性を持った【人間】だ!!
殺しあいをするために生まれてきたんじゃない!!』