廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
『あんたの気が済むんなら、好きなようにして下さい』
お陽は播磨に無抵抗だった。
抱かないつもりだった。
それでも、播磨はお陽と悟の絆の強さに嫉妬した。
一夜限りの逢瀬で、こんなに強く引かれあう男女もいれば
幼馴染みで、お互いを必要として結婚まで約束しても死に別れる男女もある。
お陽を抱いたあと、播磨は強い自己嫌悪に陥った。
『すまなかった』
『いいえ』
お陽は寝乱れを整えているが、播磨に対して素っ気ない態度だ。
またそれが、播磨の心に追い討ちをかける。
『女郎は抱いた女の数には入りゃせんよ。気に病むことなんてないのさ』
『お陽さん……南方は激戦地だろうね。あちこちで部隊が玉砕している。僕は戦地が想像つかないのさ。
南国の海は、エメラルド色だっていうけれど、本当にそうだろうか?
血に染まった赤色をしてやしないかなあ……』
呆然と呟く播磨に、お陽はかける言葉さえなかった。